「ブラック ライブズ マター」に思う

アメリカの国が揺れています。アメリカ・ミネアポリスで警官が黒人男性のジョージ・フロイドさんの首を抑えつけ、圧迫死させた事件の抗議デモが巨大化しています。更に人種差別問題が大きなうねりとなってアメリカ全土を覆っています。

 かつてこの人種差別問題に真正面から取り組まなければならなかった国があります。南アフリカ共和国です。人種隔離政策(アパルトヘイト)を実施していた南アフリカは、1994年、マンデラ黒人大統領の登場でアパルトヘイト政策を破棄します。人種の壁を乗り越え、共に国を作ってきました。昨年のラクビ―ワールドカップでも黒人主将シア・コリさんを中心に素晴らしいラクビ―を展開し、チャンピオンとなった国です。

 約14年前に結婚した家内が、南アフリカ人とあって、南アフリカがかなり身近な存在となり、これまで5回ほど南アフリカに行きました。実際に南アフリカを見てきました。

私は、何故か南アフリカとは縁があります。養神館が小金井にあったころ南アフリカのジャーナリスト「サー・ローレンス・バンデルポスト氏」が養神館に来館されました。バンデルポスト氏は養神館の顧問であった「森勝衛氏・キャプテン森」と無二の親友で、大島渚監督映画「戦場のメリークリスマス」の試写会に来日したのでした。「戦場のメリークリスマス」はバンデルポスト氏の捕虜体験を描いた作品です。私はその渋谷の試写会場に、塩田館長とキャプテン森を車に乗せ、往復しました。

キャプテン森は、日本で初めて東南アフリカ航路を開拓した船長です。大正15年、当時の政府は世界的恐慌の打開策として「アフリカ」に新市場を求めました。政府の命令で「カナダ丸」を操り、キャプテン森は南アフリカに行きます。当時の南アフリカは、アパルトヘイト真っただ中で、当然日本人もカラードピープル(黄色人)として、厳しく差別されていました。キャプテン森は、ダーバンという町で新聞記者のバンデルポスト氏と詩人のウイリアム・プルーマー氏と知り合います。この二人は、人種差別について白人側の良心というべき見識を持っていて、レストランに入れてもらえないキャプテン森を助けます。懇意にしているうちに、二人はキャプテン森の船で日本へ連れて行ってほしいと懇願します。キャプテン森は独断で無償で二人を乗船させ、日本に連れてきます。ここに人種の壁を越えたストーリーが展開して行くのです。

禊ぎ行の大家・川面凡児先生の「人生の根本義」にこのような表現があります。「人間は、何人も個人足ると同時に字の人たり、村民たり、町民たり、市民たり、郡県民たり、国民たり、世界人民たり、宇宙万民たり」人間というものは本来、個人として市民や国民として存在するけれども、世界的で宇宙的でなければならない。そもそも人間とはそのような存在なのだ、ということです。家庭人としての考えも大切だが、世界人としての考えもなくてはならない、と言うことでしょう。

アメリカの人種間の対立問題は、我々合気道人としてどう捉えたらいいのでしょうか?合気道は、対立・闘争を相手と一体になるという自然的働きで乗り越えようとしています。丹田から発する「呼吸力」による技は、相手を引きつけ、不快感を与えず、むしろ喜びの感情が沸きあがってきます。しかし、この技術と精神性は、言わば悟りの境地なのです。そう易々とは到達できないのも事実です。その境地に一歩でも近づいて行こうと歩むのが、合気の道です。

アメリカの人種問題を他人事とはせず、我々の歩む原動力として、身近な自分が直面している問題に照らし合わせて合気道を修練いたいものです。家族に怒鳴り散らしながら人類愛を説いても、机上の空論です。しかしまた、家族だけが大切というのも人間的ではないということです。様々な海外の合気道家との関わり合いの中で「一体感」が持てるような行いを心掛けたいものです。そして日本の合気道がより海外の合気道愛好家に慕われるような合気道を目指したいと思います。昨今はやりのZoom合気道もその一環かも知れません。

安藤 毎夫

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